剣山系三嶺

ミツマタばかりが残る山林

ホットスポット名称 :
三嶺(高知県ではみつみね、徳島県ではみうねと呼ぶ)
住所:
高知県香美市物部(高知県)・徳島県三好市東祖谷山(徳島県)
ホットスポットの概要:
  • 三嶺は剣山山系の秀峰。標高1893mで剣山のように観光化されていないため、貴重な自然が残る。高知県、徳島県にとって最大の貴重な自然林地帯。
  • 剣山国定公園、国指定特別鳥獣保護区、自然休養林、西熊山植物群落保護林に指定。さおりが原には、森の巨人100選に選ばれたトチノキ、イヌザクラの巨木がある。
  • ブナ群系、モミツガ群系、シラビソ群系があり、林床の多くはスズタケ。稜線部はササ原になっており、山頂周辺はミヤマクマザサ、コメツツジ群落(天然記念物)。
事業名:
ニホンジカの食害
事業内容:
  • シカの生息密度が高くなりすぎ、スズタケ等の林床植物が枯死、希少草花の絶滅、昆虫や野鳥、カモシカなど他の哺乳類のエサや営巣環境を破壊。
  • 食害によってスズタケ等の林床植物が枯死したため、樹林内傾斜地は裸地状態となり、風雨による土壌浸食が始まる。土砂災害の原因となっている。
  • 山の崩壊による土砂流出で物部川の水質汚濁。
  • 表土流出でブナの根が枯れ始めブナ林大打撃。
  • ササが枯死した場所ではカヤ、イグサ、トゲアザミなどが繁殖し、ウラジロモミやウツギなどは発芽してもすぐ食べられてしまい全く再生不可能。
事業の目的:

様々な開発により生息域を奪われたシカにとっては、食物の確保と種の繁栄だが、生息密度が高すぎ、生態系が崩れることによってシカそのものも餓死する個体が増加。

問題の経緯:
  • 2003年段階では食害はなく、2004年から食害が始まった。
  • 2006年物部川が長期にわたる濁水被害。
  • 2007年には、ササが著しく衰退し、カヤハゲや韮生越のササ原が一面枯れ野原となる。シカの食べるものが減り、樹木被害が出始める。特にウラジロモミが枯死。
  • 2009~2011年にかけて、ダケカンバ群落は壊滅。
  • 2010年、白髪分岐から避難小屋が大きな被害。ササ原の隣接樹木は約2300本、登山道からササ原西中間点では約700本の深刻な被害。
  • 2010年頃のピーク時には、1k㎡あたり80~100頭以上となり、相当な過密状態となる。
  • 食害のピークは2010年だが、山の荒廃は2010年を境に増大。
  • 2012年7月、300㎜の大雨で大量の土砂が崩落。食害が深刻ではなかった2005年には1200㎜の大豪雨でも崩落しなかったことを考えるとシカ食害によって山そのものが崩壊している。航空機による調査では、崩壊地ランク1が17地点、ランク2が29地点、ランク3が46地点にものぼった。物部川が長期の濁水被害。
  • 2012年までに、5年間をかけて大型捕獲ネットを5kmにかけて整備。ネット内では緑が甦る。
  • 2013年、綱附森から剣山にかけての主稜線部30㎞で、約1割のササ原が消失。山の崩落により、物部川への土砂流出が深刻となる。
  • シカが食べない毒草のバイケイソウ、ミツマタ、トリカブトなどが繁殖し、単調な植生になる。
  • 2013年、自衛隊の協力により多数捕獲するなど2010~2013年の3年間で230頭を捕獲。捕獲補助柵や樹木ガードを設置し対策に取り組む。
守るべき生物多様性:
  • コメツツジ、オヤマボクチ、アオホウズキ、アツモリソウ、タマカラマツ、ミヤマツチトリモチ、チョウセンナニワズ、ハクサンハタザオ、エビネ、キンセイラン、ユキモチソウ、クマガイソウ、イケマ、クサノオウバノギク、マネキグサ、キレンゲショウマ(山頂近くに数株残るのみ)等希少植物多数。
  • ササ原、ササ藪。豪雨に耐え土壌流出を抑える重要な役割を担っている。
  • ブナ、ミズナラ、ウラジロモミ、ダケカンバなどの樹林帯
  • 昆虫、鳥類、哺乳類を含めた三嶺全体の生物多様性。
  • 物部川の生物多様性保全。下流のアユ漁やアマゴなどの川魚へも悪影響が出ている。濁水が海に流れ込み沿岸生態系への悪影響も懸念。
現状:
  • 行政、猟友会、NGOの官民協働連携がうまくいき、シカ害対策成功例のモデルとなっている。特に県行政、市行政、森林管理局、農政局など行政の縦割りを超えた取組みは注目すべき。
  • ブナ林復活のため、土と苔の移植によるブナの保護や、ブナ、ミズナラ、ミヤマクマザサを植栽するなどの活動には、地元の「こどもエコクラブ」をはじめ地元市民の積極的な参加に成功している。
  • 2013年12月で、シカの生息は1k㎡あたり35頭まで減少したが、まだ適正密度を大幅に上回っている。他地域から入るため定期的な捕獲が必要。
  • 猟師の高齢化と後継者問題が深刻。
  • 捕獲の問題点
  • ①空白地域をどうするか。特に冬は雪の少ない南面にシカが集中
  • ②稜線をまたぐ連携捕獲は、地形的、アクセス的に無理
  • 源流部の森の荒廃と物部川の濁水問題の解決。物部川は、夕立程度の雨で濁水が出るようになってしまった。大型ダムが3つもあるため濁りが取れるには10~12日もかかる。
  • 登山者に自然環境変化の観察者という意識を持ってもらうことが課題。
取り組むNGO・市民活動:

三嶺の森をまもるみんなの会
http://sanreiminnanokai.web.fc2.com/
物部川21世紀の森と水の会
http://21morimizu.seesaa.net/
三嶺をまもる会
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5977/