こいわい食堂 芳川太佳子さん(タカちゃん)

芳川太佳子さん

練塀の露地

たみちゃんが獲ってきたサザエ

食の来歴が書かれたメニュー

おくどさん

ホットスポット名称:
こいわい食堂 芳川太佳子さん(タカちゃん)
住所:
山口県熊毛郡上関町祝島
タイトル:
食の来歴
レポート内容:

練塀の露地が続く。練った土と石を交互に積み上げ漆喰で固めたこの地方独特のものだ。その一角に、タカちゃんこと芳川太佳子さんが営む「こいわい食堂」がある。今日のメニューは?

まず出てくるびわ茶は、こいわい食堂の大家さんである氏本長一さんが経営する氏本農園の完全無農薬のびわの葉っぱで、ごつごつした肉厚のものを選び、洗ってから切り、袋に入れて2~3日かけて発酵させて作ったものだ。それをソーラークッカーで沸かしたお湯で入れてくれる。ナスのからし漬けは、林さんご夫婦で漬けたもの、キュウリの糠漬けは、岩本もよさん、5年ものの梅干しは、タカちゃんのお母さん作、ちなみに梅干しは3年以上漬けると薬になるそうだ。美味しそうなサザエは、女漁師のたみちゃんが獲ってきた。石豆腐は、この地方の名物でニガリの代わりに海水を使う。これは浜本しんさんが、満潮の時に海水をとり、海水と真水を交互に足して丁寧に作り上げたもの。味噌汁に使われている味噌は、林かよさんの手前味噌、祝島産のだしじゃこと切り干し大根でだしを取る。オクラとフノリはたみちゃん、てんぷらになっているアジは、タカちゃんのお兄さん、キクラゲは氏本さん、ピーナッツかぼちゃと玉ねぎは自分の畑で採れたもの。すべてが地元で取れたものというだけでなく、すべて顔が見える関係だ。食器までそうだから驚く。竹箸は石井のぶさんの手作り、お膳は氏本さんの家に古くから眠っていたもの、お椀はタコ漁師の村津さんから。

おくどさん(かまど)の前で、にこにこと食材の来歴を語るタカちゃんは、食べ物の話をするのが楽しくてしようがない様子。おくどさんは氏本家で発見し、たみちゃんに炊き方を教えてもらった。習ったのは炊き方だけではない。おくどさんの角に塩を盛り、火の神様である荒神様をまつることも教わった。おくどさんで使う薪は、ヒジキを炊く仕事を手伝うとわけてもらえる。水は上水道を使わず、井戸の水を使う。井戸にも神様はいる。年末には、正月に備えて島中の井戸にしめ縄がしめられるそうだ。 「食材も火も水も木も全部島からいただいています」。すべて顔が見える関係の物だから、すべてに物語がある。すべてに来歴がある。しかもとっても美味しい!

こいわい食堂は2011年10月にオープン。祝島の食材、祝島の食器や調理器具、かまどや七輪、ソーラークッカーなどエネルギーも祝島産、調味料だけは購入するものもあるが伝統的な手法で作られた無添加なものを取り寄せている。合成洗剤は絶対に使わない。水は直接海に流れるからだ。「5年たったけれど学びは終わらない」とタカちゃんは言う。「良いものを食べるだけでは限界かなって思って。一日のうちの多くの時間を食を得るために使います。暮らしの中心に食がある暮らし方って自然の一部であることが感じられて楽しい。海と山が恵みをくれる、共にあるって感じられるんですよね」食を中心にした島の暮らしは連続している。都会で暮らしていると仕事と食事は断絶してしまう。

タカちゃんは、生物多様性には文化や作物などすべてが含まれていることを実感しながら生きていると言う。島の70代以上のお年寄りたちには、日々の暮らしについての伝統的な知恵がすごい。祝島では女性パワーはおそるべき力。島の女性のリーダー的な存在は、女漁師のたみちゃんだ。タカちゃんは、彼女から多くを学びこよなく尊敬している。

タカちゃんにとって、こいわい食堂は、お彼岸に団子を作ったり、台風の後片付けをしたり等20も30もあるたくさんの仕事のうちの一つ。「生物多様性とは、つきつめると居心地の良さだと思う。食材の多様さは人の多様さ。全体と個が幸せになる食事を目指したい」

2015年8月30日 坂田