里浜つなぎ隊 渡辺美穂さん

渡辺美穂さん

松の幼木植樹

虫が入ってしまった松

美しい玄界灘外海

ホットスポット名称:
里浜つなぎ隊 渡辺美穂さん
住所:
福岡県糸島市芥屋(けや)
タイトル:
里浜を守る、落ち枝拾いに拾って25万本!
レポート内容:

玄界灘の外海に面している糸島半島の海は、潮が澄んでいて美しい。その中でもにぎの浜は、6kmもの弓張形のきれいな砂浜で、玄界灘の彼方に壱岐・対馬を望み、青い海と白い砂浜に感動させられる。また四季を通して人気のサーフィン・スポットでもある。しかし、2012年からいっきに松枯れが始まり、日本の「白砂青松100選」に選ばれた浜は悲惨な風景になってしまった。

当時1歳の子どもがいた渡辺美穂さんは、松枯れ対策にネオニコチノイド系の薬剤を散布すると聞き不安になった。散布しないで欲しいと声をあげたが、地元は薬剤散布に賛成で軋轢が生まれるだけ。そこで反対ではなく薬にたよらない解決方法を提案したくて2013年に「里浜つなぎ隊」を発足させた。町づくり推進協議会の環境部会で樹木医さんをよんで勉強会をしたり、九州大学の先生からも学び続けている。そして感染源を排除するため、100人ぐらいで松枯れの落ち枝拾いを1年半かけてやった。拾った落ち枝は推計25万本だ。これは松葉小屋でたきつけの燃料にしている。「いやぁ~大変でした。何しろ広いからね」渡辺さんはそんなパワフルなアクションをしたとは思えない、いい感じで力が抜けている。

マツザイセンチュウは松の幹の中に入り込み、水の通り道をふさぎ枯らしてしまう。北アメリカから入ってきた生物だが、北アメリカではマツザイセンチュウは弱った松を少し枯らすだけで松と共生しており元気な松が枯れることはない。しかし日本の松は抵抗力がないためどんどん枯れてしまう。マツザイセンチュウは、自分の力では他の松に移動できないのでマツノマダラカミキリに運んでもらう。カミキリは枯れた木に産卵するので、幼虫が潜まないように落ちた枯れ枝を拾うことが大事なのだ。「薬剤を散布しても防げないことはあちこちで証明されています。ずっと散布し続けるしかなくなるんです」渡辺さんは、「ここをもう一度気持ちの良い場所にしたい。里浜の良さを次世代に伝えたい」と考えている。

彼女が取組み始めるまで、にぎの浜は松のブッシュで放置林だった。松枯れへの取組みだけではなく、気持ちのいい場所にするため草取りも行っている。「みんな白砂青松にしたがるけど、松じゃなきゃいけないって思ってないです。海に面した最前線は松で、後ろは在来の樹木にするとかもっと多様性があっていいんだけどなぁ」そんな試行錯誤をしつつ渡辺さんは、「人海戦術だから人を集めなきゃ」とがんばる。 2014年8月から里浜つなぎ隊は、糸島市アダプト事業管理者になった。糸島市内の市有、国有の海岸林を区画割して市民や企業などの登録団体がその区画の手入れを行う松林の里親制度だ。里山・里海と同じように、人が気にかけ手を入れて、大切に子どもたちに受け継いでいく自然としての里浜。薬剤散布のオルタナティブとして取り組んだ彼女の行動は、いまや主流になりつつある。

2015年7月29日 坂田