農家レストラン・民宿バンブー食堂

須田浩史さん

民宿バンブー食堂看板

店内販売所

キッチンカー

田園にて

ホットスポット名称:
農家レストラン・民宿バンブー食堂
住所:
山口県周南市須金
タイトル:
里山に眠る宝を掘り起こす移住者の視点
レポート内容:

山口県周南市須金は、7月から11月にかけて4万人が訪れるフルーツ観光で成り立っている小さな集落。高齢化率は60%と周南市でも一、二の高さだ。須田浩史さんは、福島第一原発事故をきっかけに、この須金地区に移住した。群馬県渋川市の実家は、ブルベリーやさくらんぼを作る農家。子どもの頃は農家が嫌でしょうがなかった。千葉県松戸市に暮らし、都内の出版社に勤め、週末はDJとストリートカルチャーまっしぐらの人生だった。

しかし結婚後、奥さんの加弥子が実家から送ってきた野菜などを実に美味しく料理をしてくれることから食べ物や農業に目を向けるようになる。それからは、松戸で市民農園を借りたり、群馬の実家を手伝うようにもなった。そしてついに実家の農業を継ぐことを決めた矢先、福島第一原発事故が起きた。水の汚染や空間線量をめぐってたくさんの人々の心が揺れたように須田さんの心も揺れた。勤めていた会社が「政府が大丈夫と言っているから問題ない」と言うのを聴いたとき会社をやめようと思った。

西の方で農業を勉強したいと考えていたところ、須金の農園が社員を募集していることを知り家族で移住を決断。2年間、観光農園で農業を学んだがふと思った。「年間4万人も来るのに、食事をとる所がない。一番近い所で隣町のコンビニだ」食と農業にこだわりがある須田さんは、「気持ちのいい場所に来てコンビニ弁当じゃ悲しい…農家カフェをやろう!」とキッチンカーでスタート。1年間、観光農園で移動弁当屋にチャレンジし、その後農家レストランをオープンした。

須田さんは、移住希望者に向けて中山間地をもっとアピールしていきたいと考え、明治大学農学部の学生を年に2~3回受け入れている。中山間地には、眠っている資源がたくさんある。それに気づくと山菜、川魚、まつたけ、梅もぎとやることだらけで、都市で暮らしていた頃より今の方がずっと忙しい。地域の歴史も大事な資源だ。須田さんの家は須金集落の須万(すま) 地区にあり、名前からも連想できるように平家落人伝説がある。地元のお祭り「神子(かんこ) 祭り」は京の都風で、子どもは3歳になると公家の恰好をして男性が一日抱いて歩く。須田さんの子どもも経験済みだ。「こういうお祭りの作法を知っているおじいちゃん、おばあちゃんも大事な資源です」「この地域の里山ランドスケープを僕が作るお弁当や農家民宿にちゃんと反映させたい。それは自然、歴史、文化全部を含めた“風土”へのこだわりです」と須田さん。

この4年の間に移住者も増え、3人しかいなかった小学生が8人になった。地域交通の確保、獣害問題など地域課題の解決にも取り組みたい。福島原発事故の経験から食や農のあり方が子どもたちの体調に直結することも学んだので保養サポートチームも作りたい。そのためにも他地域の移住者同志が、情報交換し学び合うことが重要と感じ、有機農業で有名な島根県柿木村の若い移住者たちや周防大島のジャムズガーデン、八代の若い人々のコミュニティなどともつながっている。

「外に発信することで内も元気になる。そんなあり方を目指したいです」と語る須田さん。里山には、在来種の生き物たち、歴史や文化とつながる風土、おじいちゃんやおばあちゃんという資源と移住者の視点で見れば宝の山だ。須田さんは「耕作放棄地だってマイナス面ばかりではなく、ゆっくり自然に戻していくことで新しい里山ランドスケープになるんです」と語り、畑の先にある川を指差しながら「6月には、ものすごい数のホタルが飛びかうんですよ。もっといろんな人に見て欲しいなぁ」と穏やかに笑う。

2016年 坂田昌子