百姓庵の井上(ただし) さん

井上義さん

ミネラルたっぷりの塩たち

塩炊き小屋内部

塩の結晶がどんどん現れる

ホットスポット名称:
百姓庵の井上(ただし) さん
住所:
山口県長門市油谷湾
タイトル:
塩は森の味
レポート内容:

山陰地方の西のどん詰まり、山口県北部の油谷湾は、北側の向津具(むかつく)半島が日本海の荒波をさえぎり穏やかな海だ。この向津具半島に、百姓の塩づくりで話題の百姓庵がある。オーナーの井上さんは、23歳で食品関係の会社に勤め、食品のウラを見て農業に関心を持ち自然農を学んだ。その後、この地に移住し、30年以上空き家だった築100年の家を改築、荒れた農地を開墾し、自然農に取り組んだ。農作物を作りながら、自給していくために大事な食べ物はなんだろう?そうだ塩だ!と考えた。何でも自分で作ってしまう井上さんは塩まで自分で作り始めてしまった。

「塩は森の味がする」と井上さんは言う。「雨の影響だと思うけれど、油谷湾には3本の川が流入していて、ここは汽水域なので真水が混じる。だから森の環境に塩の味は左右される」塩は春夏秋冬、味がことなり、夏は濃くて冬は薄味になるそうだ。年によっても味が違う。向津具半島一帯は、棚田が多く西日本最大級の大棚田地帯。歴史的にも多くのため池が作られてきた。それだけ湧水が多いということだ。森が作り出す水が、海に流れ込み塩の味を決める。

1960年代に、化学的に作られた精製塩化ナトリウムが「食塩」として流通、定着し、1971年には「塩業近代化措置法」により強制的な塩田廃止が国策として推し進められた。山口県の場合、塩田はすべて埋め立てられ、次々と工場などに変貌していった。海水には60種類ものミネラルがあるが、精製塩化ナトリウムは、塩化ナトリウムの純度が高くミネラルはほとんど排除されてしまう。だからピリピリ辛く、自然塩のようなまろやかさはない。もちろん体にも悪い。塩が高血圧の原因ではなくて塩化ナトリウムが原因なのだ。減塩ブームも塩と塩化ナトリウムが混同されてしまった結果だ。

井上さんが作る塩は、海とできるだけ変わらない塩。なぜなら「人間のからだは、太古の塩と同じミネラルバランスになっているから」だ。塩炊きでは、最初と最後では結晶してくるミネラル分が違うので、「天地返し」といってひっくりかえしながら混ぜる作業がとても重要。混ぜることでミネラルが均一になり、海のもつミネラルバランスに近づくそうだ。「塩づくりは伝統的な知恵、塩田文化の再生が重要だ」と井上さんは断言する。

また海から直接汲み上げるということは、海水は澄んできれいでなければならない。井上さんは、ビーチクリーンにも取り組んでおり、いまや約1000人もが参加する大きな取組みになっている。

井上さんが目下励んでいるのは無農薬トマトづくり。「百姓庵の塩とトマトでめちゃくちゃに美味しいトマトジュースを作りたい!」からだ。棚田放牧で牧場もやりたいとのこと。もともと長門市は棚田放牧の発祥の地、それを復活させたいと考えている。

近い将来、山陰地方の西端に、先駆的な地域モデルとして百姓王国が誕生しそうだ。

2015年7月10日 坂田