龍国禅寺

建仁さん

800年の歴史を持つ龍国寺境内

宮本常一のことば

龍国寺文庫

湧水は裏山の恵み

ホットスポット名称:
龍国禅寺
住所:
糸島市
タイトル:
いのる、まなぶ、つどう
レポート内容:

美しい田園風景が広がる糸島市二丈波呂。清冽な小川のせせらぎを前にして曹洞宗龍国寺が静かに佇む。龍国寺は1202年(建仁3年)平家一門の菩提を弔うために開基された800年の歴史を持つ禅寺。裏には山がせまり、泉がわき出ている。里山、小川、田んぼに囲まれた日本の原風景に溶け込んでいるかのようなお寺だ。境内には、イヌマキの巨木が木陰を作っている。

地蔵堂には「龍国寺文庫」とあり「ここにある本は誰でも借りることができます」と書かれている。住職の建仁さんは「誰でもいつでも来て、自由に本を借りていいんです。もともとお寺はいつ誰がきてもいい場所なんです。お地蔵さまが見守ってくれるこの場所は、どんなことが起きてもここだけは平和な場所ですから」「かつてお寺は、その土地と人々の心の中心にあり地域社会に開かれていました。水争いが起きた時も、飢饉が起きた時もみんなお寺に集まったんです。そんなお寺のあり方をもう一度取り戻したいんです」と語ってくれた。龍国寺は、現代もその役割を担い続けている。門前に広がる美しい田んぼを壊して青汁工場を誘致する話が持ち上がった時、お寺を中心にして地域住民が力を合わせ、田んぼと豊かな湧水を守り抜いた。

本堂に入るとびっくり。田んぼの生き物に目を向け、人と自然が対立しない農のあり方を問い続けている宇根豊さんの「いきものもごはんも田んぼの恵み」ポスターが、ドンと張ってある。不思議なお寺だなぁ…と思いつつ、なぜ?と建仁さん伺うと「仏教の基本は生物多様性なんですよ。生きとし生けるものすべてが、在るべくして在るのが道理で、人間至上主義は仏の心に反します。若手の御坊さんたちで集まって生物多様性の勉強会もするんですよ」とのこと。

龍国寺では、工場誘致を阻止して以降、美しい里山と水、田んぼを守り続けるため2005年から本堂で、「田んぼコンサート」を開催している。無事、豊穣の季節を迎えられたことに感謝をこめ、毎年10月開催、素晴らしいミュージシャンたちが音を奏で、無農薬野菜、手作り木工品、オーガニックコーヒーなどマルシェも開かれる。そしていろんな人がお寺に集い、つながってゆく。「おとなの寺子屋」も開催される。「“寺子屋”という言葉どおり、お寺は本来、教育の場でもあったんです。誰でもお寺にくれば学べた。お寺はそういう役割を担っていたんです」「いのる、まなぶ、つどう、この三つがお寺の役割。お寺がこの役割を取り戻すとこの国は変わることができます」そして建仁さんは「全国でお寺がどれだけあるか知ってますか?7万件以上もあるそうです。コンビニよりずっと多い。お寺が変わると日本は変わります!」と笑う。

帰り際、ふと門の脇にある張り紙に目を止めた。全国各地を旅し、自然と人の関わりのなかで歴史的に育まれてきた暮らしの多様性を記述し続けた民俗学者宮本常一の言葉だった。「それぞれの地域に住む者が、その土地を真に愛し、その土地で生きのびてゆこうとするとき、その環境もまた美しくゆたかになってゆくものではあるまいか」

2015年7月30日 坂田