ポール・スミザー監修・作庭 湖山池ナチュラルガーデン「とっとり晴れやか庭園」

多様な日本の草花

野山に咲くキキョウであるかのよう

彩りを添えて絶妙なバランス

陽の光に輝くススキの美しさ

水辺に訪れたアオサギ

ホットスポット名称:
ポール・スミザー監修・作庭 湖山池ナチュラルガーデン「とっとり晴れやか庭園」
住所:
鳥取県鳥取市
タイトル:
いのちめぐる庭
レポート内容:

「なんで日本人は、ススキを庭に植えないのかな」とポール・スミザーさんは言う。イギリス出身のガーデン・デザイナーであるポールさんは、世界有数の植物大国である日本人が、まわりの草花に目を向けないことが不思議そう。イギリスの植物種の総数は、約1600種。日本では、東京都高尾山周辺だけで同数の植物が存在する。それなのに、どこの駅も花壇にはお決まりのパンジーを植え、毎年春になると業者が来て植え替える。カフェの道に面した小さなスペースに巨木になるコニファーを植えてしまうなどトンチンカンなものが目に付く。「日本人は足元に大事なものがあることに気付いてないよね」。
これまで見向きもされなかった日本の草花に目を向けたポール・スミザーさんの庭作りは、ガーデンニング界に旋風を起こした。そんな彼が構想に3年かけて取り組んだのが、鳥取市の湖山池ナチュラルガーデンだ。世界でも例のない日本の野草が9割以上をしめる「地元の素材にこだわった山野草を中心にした庭園」で、地産地消の庭バージョン。ポールさんがつけた愛称は、「とっとり晴れやか庭園」だが、その名前に込めた思いは、「青い空と水のひろびろと広がる場所。植物がのびのびと美しく、たくましく、仲良く育っている場所。野鳥や蝶々が自由に飛びまわり、魚たちが水面ではね、生命の輝きを感じられる場所」。

 

実際に訪れてみると、その多様性にびっくりする。200種3万株が植えられているとのこと。ススキ、ギボウシ、キキョウ、ウツギ、ハマナス、ミヤコグサ、ノガリヤス…

 

それぞれが、人にとってではなく、植物にとってお気に入りの場所にある。ポール・スミザーさんが提唱するナチュラルガーデンは、里山の発想にとても近い。庭とは人が理想的な自然を身近に楽しむために作るものだから、ちゃんと手を入れてあげなくてはいけない。そして、①植物の住環境を見極める、②農薬や肥料の助けはいらない、③季節の変化を楽しむ、この3つがポイント。「もっと多年草に注目して欲しい。芽が出て、葉が出て、花が咲いて、実がなり、地上部は枯れちゃうけど、根は越冬する。いつも庭は花が咲いてなきゃ嫌だとか、同じ種類のものだけの庭というのは変なんだよね」

 

ポールさんの庭には生き物が集まってくる。様々な昆虫、クモにカエルにトカゲたち、鳥たち。多様な命がかかわり合いながら、庭の風景をかもしだしていく。希少種になってしまった植物の再生にも取り組む。それぞれの庭やあちこちの公園が、季節の移ろいや命の循環を感じさせてくれたなら、街を歩くことも楽しくなりそうだ。今、鳥取市は、市内の都市公園や公共空き地を「まちなかスポット」としてミニナチュナルガーデンを作っている。出来上がった時が完成形ではなく、何年もたつうちに植物たちが育ち、木陰を作ったり、地面をカバーしていくことで、人にとっても心地良い場所になっていく。だから、湖山池ナチュラルガーデンは、一度訪れたらそれっきりではなく、1年後にはどうなっているだろう?5年後は?10年後は?30年たつとどんなに素晴らしくなっていることだろうかとワクワクさせる場所だ。

2015年8月27日 坂田